■ガンジス 下流篇
9. Sarnath (サルナート)
ヒンドゥー教最大の聖地ヴァラナシの郊外に、サルナートという仏教聖地がある。そこは仏陀がはじめて法を説いた場所として、世界各国の仏教寺院が建立されている。
あるとき日本寺の住職に誘われて、ガンガープジャと呼ばれる供養会に参加させて頂いた。
冬の未明、霧に煙ったヴァラナシの岸からガンジスに小舟を漕ぎだしてゆく。やがて東の地平が淡紅色ににじむ頃、河面を覆った霧が流れ、視界がゆっくりと晴れ渡っていった。
ココナッツ、リンゴ、マリーゴールドの花輪。日の出とともに供物が河に手向けられる。そして船上では法華経が唱和されてゆく。
対岸に目をやると、そこには沐浴に励む多くのインド人たちの姿があった。日本語で経を唱えつつその光景を見やっていると、自分が彼らと同じアジア人であることが改めて実感されてきた。
チベットを越え、東南アジアを巡り、仏教はこのガンジスの岸辺から日本に渡ってきたのだ。そう、この大河は何もインド人だけではなく、日本人をはじめ多くのアジア人にとっても「母なるもの」であるのかもしれない。




